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「あいつはつまらん」

時々、社内でこう言う言葉が聞こえてきます。若い人同士では、この言葉を使うことはほとんどないでしょう。使うのはベテランスタッフが、自分より若いスタッフを指して使う言葉だと感じます。では「何がつまらん」のか少し考えてみたいと思います。

この言葉を使う時は、人を評価しようとする時です。そしてその評価の基準は、いままで自分が養ってきたものの見方・考え方、あるいは自分がこれまで長年かけて積み上げた経験というものを基準にして、現在の若い人の行動を比較しています。そして自分の期待していた行動が取れていないことを、「つまらん」という一言で片付けようとするのです。

言われる方は恐らく、自分の何がつまらんのか戸惑うでしょう。自分の足りないところを、より具体的に示してあげると、修正の機会もあるはずですが、その機会を「つまらん」という側のベテランスタッフがうまく創れていないのかもしれません。原因としては、いまいる我が社の多くのベテランスタッフがまだ若い時に、当時のベテランスタッフのメンバーから、「オレの背中を見ろ」「人の仕事を見て盗め」などという、教え方などとは程遠い、精神論で育っているために、実際に教える立場になって、どんな教え方をしたらいいのか、声の掛け方をしたらいいのかよくわからないという状態が起きていることは容易に想像できます。

また教える側が、自分のものの見方・考え方が本当に良くて、若い人たちのものの見方・考え方が良くないのか、足りていないのかをよくよく考えて、ものを言っていないことも「あいつはつまらん」という言葉を吐き出す要因ではないかと思っています。

人を教えるには、まずは自分を振り返ること、見直してみるという素直で、謙虚な姿勢が必要です。経験は仕事をすすめる上で、最も大きな力になるのは間違いありません。経験が知識になり、技術になり、ノウハウになります。しかし最も大事なことは、その経験をどのように自分に活かすのか、その活かし方でその人の「人間力」の幅が決まってきます。

我々の経験が知識や技術・技能を創ります。しかしそれだけでは単に仕事をこなしている人のレベルにとどまります。経験が知識・技能のレベルをさらに高くして、さらにそれをお客様、あるいは共に働く仲間にどれくらい「よい影響」を与えるものになっているか。これが、仕事がその人の人間力を作るメカニズムです。志が高いレベルなので、このレベルの仕事を「志事」と言い換え、普通レベルの仕事をはっきり区別している場合もあります。

このレベルの人は「あいつはつまらん」が前面に出ません。問題点も探しますが、相手の良いところ、うまく言っているところも探ろうとします。そしていいところを褒めた上で、足りない部分を合わせて教えてあげる。そうすると言われる方も納得します。「今日の◯◯さんのここは良かったね。」その後で指摘したい部分を伝えればうまくいくのです。

「あいつはつまらん」という人も、自分が褒められると嬉しくなるはずなのに、他人のことになると、出来ていないところを指摘することで、自分の能力と先輩、あるいは上司という立場上の優位性を見せつけようとします。そこにはあまり素直さとか、謙虚さを感じることはありません。他人を包み込む包容力も感じないでしょう。そういう自分も見直そうとせず、人を批判ばかりする人こそ、「あいつはつまらん」のだと私は感じています。

この文章を読んで、少しでも自分を振り返り、さらにより良くしようと感じたら、まずは「相手の良いところを見るトレーニング」が必要です。だれでも出来ます。でもすぐには出来ません。何度もトレーニングが必要です。私もそうでした。ベテランや先輩がそういうことを繰り返しやろうとすることで、いい雰囲気の組織が創られるのです。

これが我が社の企業理念「協働共育」なのです。教える側も教えられる側も共に学ぶ姿勢が大事です。

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