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「経験を活かす」と「過去にしがみつく」ことの大きな違い

 今回のテーマは、新入社員や2年目、3年目くらいの社員に向けて書いているものではありません。自分の行動を、自分の過去と比較しやすいベテラン社員を中心に、4年以上の我が社での就業経験のある社員に向けて書いています。

勤続年数が長くなるほど、我々はそれなりに知識や技能・技術を習得していきます。そのことは経験がもたらす良さであり、これを経験知と呼びます。我々は経験知を武器にして、顧客へのサービスを強化していき、それが顧客価値になっていきます。そして勤続年数が長くなるほど、ベテラン社員は経験を価値に変える役割があります。
ところが、そのことを勘違いして捉えていると、ベテラン社員は経験を価値に変えることが出来ずに、組織に様々なマイナスの影響を与えます。

それは、経験と過去を一緒に考えていることです。

 過去を振り返って、いろんな高名で立派な人たちから、「過去の経験は捨てろ!」と言われて、すぐには納得できないことが私にもありました。「経験を捨てたら仕事にならんやないか」「オレに別の仕事したほうがいいと言っているのか」と思うこともしばしばありました。しかし、それは経験と過去と一緒に考えているから、このように思うわけで、経験と過去は違うというところに気づくと、この「過去の経験は捨てろ!」の言葉が附に落ちるようになりました。

仕事において、職場において、家庭において、いわゆる自分の人生において、いろんな変化が起きます。その時々において、自分をしっかり見つめ直して、新たなる目標を自分の中でしっかりと立てられる人は、常に前向きで、肯定的で、建設的で、プラス思考でものごとを見つめようとします。
しかしそのような時ばかりだといいのですが、我々は、人生における様々な変化に対応するのが、時折辛くなることもあるのもしばしばです。

自分のなりたい状態や、やりたい状態を未来に見つけようとする人は、自分のこれまで培った経験をプラスに活かそうとします。この様な人の価値観は過去に囚われていません。過去に自分が創った経験知を上手に活かして、未来に対応しようとします。感情も肯定的で、建設的で、プラス思考です。

自分の生き方に新たなる目標を決められない人は、自分の未来に明るさや希望をなかなか持てません。するとそんな人は、自分の過去に自分の拠り所を求めようとします。

自分の未来・将来に不安を持っていて、それを打破することに前向きになっていない(心の中では不安に思っているが、表面には出していない)人は、今までやってきた自分なりの「過去の栄光」にしがみつこうとします。

やっかいなことに、本人は自分の経験を活かしていると思っているのですが、そうではありません。否定的な感情は拭えませんので、やればやるほど、孤立感やまわりへの悪影響を広げていきます。

出てくる言葉も、ハンコを押したように決まっているのが、面白くなることさえあります。「なんでオレがそこまでせんといかんとや〜」「オレはそこまではせん」「オレは仕事しかせん」「ほかのことは知らん」etc・・書いていると自分で笑いが出そうなくらいワンパターンな表現です。

これらの言葉をよく聞いていると、過去にしがみついている様がよくわかります。つまりそのような人たちは、いままでやってきたこととの比較を常にやっているということです。
「そこまでせんといかんとや」「仕事しかせん」の「そこまで」「仕事」とは自分が今までの過去にやってきた仕事の範囲を指しています。そしてすでに自分がやれる範囲を自分で勝手に決めているのです。

企業が成長・発展するためには、絶えず「新しいものへのチャレンジ」が求められます。新しいものへのチャレンジがもたらすものは、マンネリの打破や能力開発、変化対応力の強化、新商品や新市場の開発など、企業の成長にとって欠かせない効果が得られます。ところが人間は「未知なるもの」へは常に不安をもつ生き物です。できるなら今までやってきたものにしがみつきたいと言うのも自己防衛本能を持つ動物ならではの感情です。そしてそこに打ち勝つ勇気を持つことで、動物である人間は人間らしく成長していくのです。

 将来への不安は、自分の中に内在する「自信のなさ」の現われなのかもしれません。自分の能力に対する自信が揺らいでいる、やれると言ってやれなかったらどうしよう。やれない自分を人に見せるくらいなら、やらないようにして、自分がいままでやってきたことで、他の人に認めてもらおうという気持ちが働きます。

能力とは、「知力・体力・気力」のことです。我々、人間は年を重ねていくと能力が衰えます。それを一番感じているのは自分自身です。人間は誰もが衰えていくのです。しかし周りを見ると、自分より若かったり、自分と同じような年代の人が自分の能力をさらに発揮している姿を見ると、自分の中の「自信のなさ」が顔を出してきます。

これは、ある上場企業に勤めている20代の若者から直接聞いて、思わず私が唸った言葉です。「自分を信じられる人は、他人を活かすことができる。他人の能力を自分の資源としてうまく活用できるから。自分を信じられない人が、他人を動かそうとするといずれうまくいかなくなる。なぜなら自分に与えられた立場上の優位性(上司とかリーダーとかの肩書、あるいは先輩の地位)だけを利用して、他人に指示・命令しかしないから」
まさにその通りだと感じました。この人はまだ20代です。たとえ若くても、自分で行動してみて、学び続けると、世の中が見えているよなと感じました。

価値観には大きく4つあると常々伝えています。「人間観」「人生観」「仕事観」「社会観」です。どれも自分の人生をより豊かなものにするために、幸せになるために、磨き続ける必要があると思えるようになりました。将来への目標をつくるのは、「人生観」です。どんな人生にしたいのか、どんな生き方をしたいのか、どんな家庭を創りたいのか、どんな夫婦でありたいのか、このことを考えることはとても大事なことです。しっかり考えていないから、問題が起こるのだと極端な意見は言いませんが、我々の人生観が大きな柱になっているのは間違いありません。

人間の能力はだれでも年を取ると衰えます。それをうまくカバーすることができるのが、「経験を活かす」というベテランにしか出来ないテクニックです。
自分の経験を若い人に伝える。伝え方も自分の過去の経験知には囚われない。
「オレはいままで人から教えてもらわなかった。自分で先輩の背中を見て、ここまでこれた。だから今の若い人たちもオレと同じようにするとオレと同じくらいの経験が智恵となって身につく」ではダメダメです。

確かに、このことは、「自発性」を促す意味では価値のある考え方です。しかし同じ社員とは言え、育った環境や年代が大きく変わっているのです。変わっていることを感じることができるのは、若い人ではなく、過去を持っている先輩側です。その違いをキチンと理解して、伝えるテクニックを身につける必要があるのは、先輩側の方です。

この時点で、「オレはそこまでせん」と思った人は、もう終わっていますね(苦笑) もしかしたら、成長発展を常に追い求める我々の組織には、ふさわしくない人材(人罪)になってしまっているのかもしれません。あなたにふさわしい成長を求めない中小零細企業はたくさんあります。そちらのほうが居心地がいいかと思います。ただしそれらの会社が永続するかどうかは極めて微妙です。そうして社会をさまよい続けている人も世の中にはたくさんいますし、たくさん見てきました。

この「若い人たちの立場でものごとを考える」トレーニングをベテラン社員ができて初めて、「自分の経験をさらに活かす」ことが組織の広がりの中で可能になります。それには、新しいものへのチャレンジというテーマは常に我々に突きつけられるテーマです。我が社の中には、そこに気がついて、一所懸命新しいものにチャレンジしている人が増えてきました。最初からうまくいく人は、物の見事に一人もいません(笑)みんな自分の出来ないところをさらけ出して、努力を重ねています。

いままでやってきたことの量を増やすことはとても大切です。そしてもっと大切なことは、いままでとは違うことにチャレンジすることです。それは大それたことだけではありません。挨拶の声が小さいあなたは、いまよりも大きな声であ挨拶しましょう。呼び捨てで人を呼んでいるあなたは、さん付け、君付けで人を呼ぶようにしましょう。整理整頓が上手でないあなたは、整理整頓を意識しましょう。あなた自身を変えていく新しいチャレンジは、我が社のいたるところにあります。そうして今まで苦労して獲得してきた知識や技能や技術をもっと活かせる人財になりましょう。

最後に我が社の人事理念は、「人は育つ」です。

人を育てるではありません。人は育つのです。だれもが自分の中の可能性を見て、それを信じようと努力をすれば人は自ら成長していきます。年代は全く関係ありません。そう思うか思わないか、つまり我々のものの見方・考え方「価値観」で決まってくるのです。

「過去にしがみつく」のはなく、「経験を活かす」ベテラン社員と仕事ができる楽しさを、これからも味わっていきます。

我が社の企業理念は「協働共育」です。

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